Leader's Language 言葉遣いこそ最強の武器
チームビルディングの勉強のために、【Leader's Language】という本を読んでみた。
LEADER'S LANGUAGE 言葉遣いこそ最強の武器 | L. デビッド・マルケ, 花塚 恵 |本 | 通販 | Amazon
この本の背景には、2015年に太平洋でハリケーンに突っ込んで行って沈没した貨物船エルファロ号の事故がある。
エルファロ号の出港前、熱帯低気圧は、エルファロ号の航路からは逸れた進路となる気象予報が出ていた。しかし、出港当日にはハリケーンに成長し、進路も、エルファロ号の航路にぶちあたる進路に。
途中で航路を変えることも出来たはずだが、船員も船長も計画航路に対して「異論」を出すことはなく、そのままハリケーンに突っ込み沈没に至るという悲しい事故である。
エルファロ号沈没の謎
どうしてエルファロ号は沈没したのか。この点に関して、船長と船員というチームにおける「言葉遣い」の重要性をキーにして、チームマネジメントを語っている。
結論的には、エルファロ号の船長と船員は、いわゆる、上司と部下の関係性であり、計画航路変更に対して「異論」を言いづらい空気があり、改善の思考が働かなかった可能性に言及している。
関係性 | 問題が出ている時 | 指示に対する態度 |
---|---|---|
上司と部下 | 問題を言いづらい | 服従 |
チーム | 相談しやすい | 分析、異論、検討、改善 |
なかなか旧態然とした人間関係で、規律が重んじられる船の上でのことでは仕方ないのかもしれない。が、一般企業でもこうなるチームは見かけることがある。
赤ワークと青ワーク
この本では、この上司部下の仕事の関係性を、「赤ワーク」と「青ワーク」と表現している。
昔は赤ワーカー=部下、青ワーカー=上司という構図であり、青ワーカーである上司が思考と決断をして、赤ワーカーである部下は実行のみを行うという考え方だった。しかし、今は、多様な思考が重要とされるので、上司、部下の立場によらず、仕事のモードとしてどちらも実施する必要があるとされている。
- | 仕事内容 | 意見の多様性 | 視野 | 行動様式 | 脳への負荷 |
---|---|---|---|---|---|
赤ワーク | 実行、達成率 | なし | 狭い | 個人プレー | 小 |
青ワーク | 思考、計画、改善 | 多様性 | 広い | チームプレー | 大 |
船長は赤ワークモードで、自分の責任を全うしようとしたのだろうが、考える事を放棄してしまっており、船員も自分の立場の仕事は船長に従う事であると考えて、意見の多様性をもって、最適な実行への決断をするという意識が無かった。
赤ワークと青ワーク、どちらかだけではダメで、両方を両立させて、多様な思考の結果導かれた行動になるようにすることが重要。
赤ワークと青ワークを両立させるには
以下のような考え方が必要
- 計画は自分たちが決めるものと自覚する
- 多様な意見によるリスク低減
- 自分の責任がどこにあるか自覚する(Goal思考)
- 計画は常に最適なのか適宜見直し(スプリントミーティング)
- リスクに気付いたら改善モードへ(KPT実施)
- 自らの立場により可能性を制限しない
PJマネージメントをしていると、小さいリスクに気付くことが多々あるが、それを放置せずに、その都度、チームで検討を行って、方向が正しいか、常に改善を行いながらPJを進める必要があるという良い教訓だ。
最近、ダイバーシティが企業経営に重要だという声をよく聞くが、PJマネジメントにおいて、自分自身とは特徴が異なる人の意見というのは、自分では出せないアイデアであったり気づきである場合が多いので、この声の存在を大切にしないといけない。
多様な声を大事に活用するには
せっかく良い「異論」を持っている人がいても、それをチームで共有してもらわないと宝の持ち腐れである。
そこで、声を上げる為の環境を整えておくことが大事だという。「異論」を出しても大丈夫と思える「心理的安全性」が必要である。
多様な議論の結果を実行に移すには、
「異論」も出して有効な議論が出来ても、赤ワークの実行へ繋げないと意味がない。
行動への「責任感」を生むには、「私は~する」「私は~しない」という言い方である必要がある。
内発的な意思として、自分自身が考えてこうするのだという動機が責任感となる。「俺は海賊王になる。」というのと同じ。
これをチームメンバーにやってもらうためには、自分自身で行動の判断が出来るだけの「情報」を与えることが重要である。
何かの行動実行に対して「Yes/No」の選択しだけでは、何か問題が発生しても、「命令されたからです。」という言い訳が出てくる。