デジタルとAIの未来

今後、AIを仕事に利用していくうえで必要になってくる考え方を学ぶために、オードリータンの「デジタルとAIの未来を語る」を読んでみた。

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社会イノベーションを起こすキーワード

オードリー・タンさんは、2016年に台湾史上最年少の35歳で台湾デジタル担当大臣に入閣した凄い人。
2020年のコロナ危機の時に、台湾が世界でいち早くウイルスの封じ込めにデジタル技術を駆使して成功するという成功の立役者である。
デジタル技術を使っていわゆる「社会イノベーション」を実現したわけだが、その為のキーワードとして3つ

  1. Fast:素早く簡単に出来るように
  2. Fair:誰も置いてけぼりにしない
  3. Fun:楽しさがあるとみんなやってみる

AIやデジタル技術を仕事で活用するには

2045年にAIが人間を超えるシンギュラリティがきて、人間の仕事は無くなる懸念があるが、AIはあくまでも人間の補助ツールであって、杞憂と述べている。
ドラえもんとノビタのように、ドラえもんはノビタにあれしろこれしろと色々言うが、決めるのはノビタであり、ドラえもんはノビタからの「どうして?」という疑問に答える説明責任がある。

AIモデルの中身はほとんどブラックボックスであり、人間の質問に対する回答が、なぜそうなっているのか分からない。このため、AIにはその回答へ至った理由を説明する責任が必要になるという事だと思う。
具体的には、何らかのビジネス的な判断の助言をAIに求めた場合、AIは回答とその理由も説明し、人間が判断を下せるようにすべきである。


また、AIに限らず、デジタル技術を活用して「社会イノベーション」を起こすためには、デジタルに疎い人でも使えるレベルにするべきであり、
そのためには、多角的で多様な意見が必要と言っている。

実際の仕事ベースで考えると多角的な意見を得るためには、

  • SW技術にそもそも疎い人の意見
  • 60代以上の意見
  • AIにより仕事が無くなるのではと危惧している人の意見
  • 何らかの障害を持つ人の意見
  • 経営層の意見

新たな仕事の価値観創造の可能性

オードリータンは、柄谷行人「交換モデルX」というものに大きな影響を受けたという。

自分以外との情報やサービスのやり取りには、見返りを求めるのかそうではないのかによって、下図のように、家族間、上司部下間、市場と3パターンに分けられる。
しかし、知らない人間同士が見返りを求めずに情報やサービスをやりとりするモデルには名前が付けられないため、これを「交換モデルX」と呼ばれる。

この「交換モデルX」は、例えば、インターネットの世界や、ブロックチェーンで情報をやりとりする暗号資産がイメージされる。

しかし、この「交換モデルX」の場合、どこかで嘘をつく人間がいれば、この「交換モデルX」への信頼は失われ、モデルとして成立しなくなる。
しかし、これがAIやデジタル技術で解決されるのなら、既存の貨幣市場に代わる新たな世界観の構築とも言えるので、もはや仕事というものの価値観も変わっていくという大きな話に思えた。
DAOがその形の一つになるのであろうか。


もう少し現実的な見方をしてみよう。
台湾におけるコロナ対策の成功のように、多角的で多様な情報交換が、イノベーションの源泉となるのであれば、「交換モデルX」がイノベーションの源泉だと言える。
また、最近話題のChatGPTも、100万人のちょっと遊んでみたい人が色んな情報をChatGPTへ与えることで、ChatGPTは新たな学習をして性能UPし、さらにその結果をまた別の人へ還元していることを考えると、これも「交換モデルX」の一つなのかもしれない。誰かの「欲求」や「問題」を解決することをトリガーとしているので、根幹的なところは、既存のビジネスと同じ流れである。
こう考えると、やはりAIを仕事に使う上でも、人間が考えるべきところは、それほど今までと変わらない。